四季彩館ブログ

みさやま紬

みさやま紬は、その土地(三才山)から名付けられた紬織物。

しかし、そこには多くの機屋やある訳ではなく、紬織が盛んな土地である訳ではないのです。
確かに、紬織には適した土地であるかもしれません。糸染めの原料となる草木が生い茂る野山に囲まれ、水にも恵まれている土地とされています。

みさやま紬は、年に限られた数しか生産されません。
それは制作者が、その制作手法に遵守し、織物としての極めて高い質感を求めているからなのです。
しかし、この制作者が求める「質感」は、染織家の創造性・独創性が表現された作品性とは些か異なるようなのです。
この制作者の意向もあるためなのなのか、「作品」との扱いではなく、あくまでも「お品」として捉えられているようです。
草木より染料をつくり、糸染めを施し、一点々々、丁寧に織り上げる訳ですが、それはあくまでも「お品」であり、作品ではないのです。限りなく、制作者の意向(独創性や創造性)を「織物」に反映させない。制作者は、手を掛ける紬織を通じて作品性を主張をさせない。
それが、頑なな制作者の唯一の主張なのかも知れません。

では、質感の高い「お品」とは何なんでしょうか?
みさやま紬は、程良く軽く、極上のしなやかさを保っています。また、織物としての表情も挑戦的ではない。彩りも静かであり、且つ、控えめな印象を保っている。
着物としてお仕立てをされる前の「反物」としても、ふっくらとした「豊かさ」をも感じさせてくれます。手触りも、他の織物にはない質感をも保っています。それは、実用=「着られること」を想定されいるのかもしれません。袖を通し、所作に適う「着物」として織られているのだと思います。
控えめな印象は、飽くことのない奥行きをも備えています。たとえ表現の強い帯と適わせても馴染んでしまうのです。
控えめかもしれないけれども、ある強さを保っているようなのです。

みさやま紬は、横山俊一郎氏が糸染めから手を掛けた紬織物です。その土地に自生する草木を使い、糸を染め、機に掛けます。着られることが想定された紬織であるため強い印象力はありませんが、絹織物としなやかさと天然草木染料の落ち着いた美しさを湛え、実用の美意識を保った織物なのです。

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